日本再生医療学会

ニュース

2024.4.30

  • 学会からのお知らせ
  • 声明・ガイドライン等
  • リスクコミュニケーション

細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンスについて

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

現在、細胞外小胞(Extracellular Vesicles; EVs)もしくはエクソソームまたはこれらを含むとされる細胞培養上清など(細胞外小胞等)を用いた治療(以下、本文書では「EV療法」と呼ぶ)が世界的に注目を集めている。EVsとは、細胞から分泌される小胞で、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質を含んだエクソソームなどからなる(図1)。EVsは細胞培養上清から修飾を施さずにそのまま採取される天然型や特定の細胞株培養上清液や特定の動植物やその培養細胞などからEVsを精製・回収した後にペプチド付与などの修飾を施したり、EVsの供給元である細胞あるいは動植物等に遺伝子改変を施したりすることで、特定の機能をEVsに付与するもの、また特定の治療薬を内包することでドラッグデリバリーシステム(DDS)の担体として利用する改変型EVsがあり、今後対象となる分野・疾患の範囲が多岐にわたる可能性があり、その発展性が期待されている分野である。しかしながら、現状においてはEVsを主な有効成分とする医薬品に薬事上の販売承認を与えた国はなく、また、International Society for Extracellular Vesicles (ISEV)や各国において、ガイダンスもしくは指針(ガイドライン)の策定が十分ではない。

本会では2021年3月10日に、EVsの中でも特にエクソソームについて「エクソソーム等の調製・治療に対する考え方」[1]を示し、このような発展性のある分野が、安全性高く推進され国民に届くことを目的に発表してきた。そこから3年経過し、その間の知見・技術の進歩により、3年前に比し具体的に臨床を目指して治験を行おうとする方向に進んできた一方で世界的には、EVsやエクソソームを謳った薬事未承認の製品・調製物の投与がクリニックなどで行われている現状が依然としてあり、その安全性、有効性への懸念が生じている現状がある。また、2023年12月25日に日本細胞外小胞学会 (The Japanese Society for Extracellular Vesicles; JSEV)からも「細胞外小胞を用いた医療行為に対する日本細胞外小胞学会の見解」[2]が発表され、本会と同様に懸念を表明している。

今回は、安心、安全なEV療法の発展、開発のためにEV療法の実施者が確認すべき「現状確認項目」「推奨項目」を挙げて解説を行い、今後の健全な方向性を示すことを目的とした。今回、(1)リスク・プロファイリング、(2)調製工程(製造工程)・品質、(3)EVsのチェック項目並びに効果検証の3つの項目を策定した。また現時点での文献的なレビューや独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の科学委員会「エクソソームを含む細胞外小胞(EV)を利用した治療用製剤に関する報告書」[3]や各構成員の状況把握や経験を元にまとめた。

EVsに関しては、細胞源の種類は多岐におよぶ可能性があり、天然型以外にも改変型が発展してくる見込みがある。こうした多様性や進歩に伴い、今後発展が期待される分野であり、一方で研究発展にともによりよい方向に改訂されていく分野である。そのため、本ガイダンス作成においては現状において利用が想定される「間葉系幹細胞」の「天然型のEVs」を意識し、上記の3つの項目に重要項目を絞ってまとめている。 なお、本ガイダンスは、現在の最新の知見を集めたもので、科学の進歩や発展、実際の治験等の実施例を踏まえ今後必要に応じて改訂するものとする。


[1] https://www.jsrm.jp/news/news-8031/ (最終アクセス2024年4月9日)
[2] https://jsev.jp/docs/jsev_ev_treatment_2023122501.pdf(最終アクセス2024年4月9日)
[3] https://www.pmda.go.jp/files/000249829.pdf (最終アクセス2024年4月9日)


細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)

※ご意見、コメントはsecretariat@jsrm.jpまでお送りください。