本会について

ご挨拶

日本再生医療学会理事長 澤 芳樹

 

世界はいま、ITによる加速度的な情報通信革命と地球規模化が進む一方で、爆発的人口増加、宗教や人種対立などによる抗争、食糧事情や地球環境の悪化など地球規模の危機的課題を抱えています。その中でも、日本社会は世界で最初に超高齢人口激減社会を迎え、その社会的経済的対応が世界から注目されています。特に重要なのは、医療やヘルスケアであり、その技術が日々進化する中で、より高い価値の創造が求められております。こういった中、失われた身体機能を取り戻すために、幹細胞等を利用して組織、臓器等を再生させることにより、難治性疾患・重篤疾患やQOL改善が必要な疾患を克服する再生医療は、従来医療の一翼を担うことを世界中から期待されています。

 

再生医療のKey Technologyは、細胞開発であり、近年の幹細胞学の画期的進歩がその臨床応用として再生医療に大きく貢献しつつあります。さらに、工学的技術を駆使して生体粗織を細胞と足場材料を使用して再生する組織工学(Tissue Engineering)も、もう一つの重要な科学技術であります。特にわが国においては、これらの基礎研究のレベルは世界屈指であり、最近の幹細胞学、細胞移植技術や培養関連技術の進歩によって再生医療は臨床応用の段階に至っており、さらに会員であられる山中伸弥先生の2012年のiPS細胞に対するノーベル賞受賞は、わが国のみならず全世界の再生医療への期待に一層の拍車を掛けております。今後、普遍的な治療として一般化するには、アカデミア中心の研究開発から、企業への適正な技術移転による産業化の推進が重要な鍵を握っていると言っても過言ではありません。

 

このような背景のもと、日本再生医療学会は「革新的医療として再生医療を国民に安全に有効に迅速に届ける」ことを理念に「再生医療の進歩、発展および育成を図るとともに人類の健康増進と福祉の向上に寄与すること」を目的として2001年に設立されました。本会はあらゆる領域の基礎から臨床まで多様なバックグラウンドを持つアカデミア研究者・企業開発者によって構成され、現在会員数は5500名を超えております。本会の理事長は初代の辻 公美先生(2001-)から、中内啓光先生(2007-)、岡野光夫先生(2010-)、澤 芳樹(2015-)の4代にわたり、基礎研究から産業化にかかるあらゆる段階に向き合い、様々な活動に注力して参りました。不肖の私も2期目の理事長を拝命し、再生医療がリアルワールドに展開されつつあるいま、この社会的要請の大きな任務にあたることに、改めて身の引き締まる思いでございます。

 

さて、本会では、その設立理念に基づき、再生医療研究ならびにその応用としての治療方法の開発を強力に促進するとともに、臨床開発における隘路、とくに薬事規制等における開発側からみた課題を検討し、その積極的解決方法を模索し、実行するため、2012年から周期的にYOKOHAMA宣言等の声明を発信し、「再生医療研究者・開発者から規制当局への要望」として再生医療への適切な規制のあり方を求めてまいりました。その結果、政府当局では、厚生労働省、文部科学省、経済産業省など省庁を中心にその縦の障壁を超えて議員立法による「再生医療推進法」、改正薬事法「医薬品医療機器等法」による再生医療の章立て、そして「再生医療等安全性確保法」などの再生医療関連の法制化が進みました。これらの法制度を基盤に、世界の再生医療先進国として、日本から世界に向けて再生医療の展開普及が大いに期待されるとともに、世界で最も革新的な再生医療等製品に対する早期承認制度は、世界各国やグローバル企業からも絶大なる評価を受けており、その成果が挙がりつつある状況です。医薬品医療機器等法に沿った再生医療等製品の承認申請においても、再生医療推進法の趣旨に則った柔軟な運用が、ますます期待されるようになってまいりました。もちろん認定再生医療等委員会の品質確保といった喫緊の課題も、既に議論されているところであり、今後も本会では、法のより良い運用に、さらなる配慮を図っていく所存です。

 

さらなる本会のミッションとしまして、昨年の総会で発表しましたOSAKA宣言(2016年)において、本会では「再生医療の普遍化」をその目標として設定いたしました。研究(bench)から実用化(bedside)までを途切れなく、世界最大規模の再生医療のコミュニティとしてオールジャパン体制で支援することにより、再生医療を国民のみなさまに普遍的治療として届けることに、まさにこの今日にも役員をはじめとする多くの関係者にご尽力をいただいています。

 

そして2016年の秋には日本医療研究開発機構(AMED)の委託によるナショナルコンソーシアム(NC)事業を開始し、臨床研究支援、人材育成、データシステムの3つの軸からはじまる各種の事業を遂行しています。今までは各研究機関内に属することの多かったこれらの仕組を日本全国へとスケールアップさせることで、臨床研究レベルにおいても再生医療の普遍化を進めることを目指しています。特にデータシステムに関しては、本会が医薬品医療機器総合機構(PMDA)より再生医療等制品の市販後調査(PMS)レジストリの貸与を受けてその運用を行ってまいる所存です(執筆時現在応募中。)。これにより、臨床研究からPMSまでのデータ管理を、一貫して本会の品質の確保された(Computerized System Validated: コンピュータ化システムバリデーション済)データベースでカバーできるようになり、このようなNC事業によって、再生医療の普遍化・産業化が進んでいくものと期待しております。

 

日本再生医療学会は、再生医療が一日も早く国民のそして全世界の人々のお役に立つように、たゆまず努力推進してまいりますので、何とぞ、ご理解とご支援の程、よろしくお願いいたします。

 

2017年3月31日