日本再生医療学会

ご挨拶

日本再生医療学会理事長 岡野栄之

この度、新しく日本再生医療学会の理事長に就任しました岡野栄之でございます。
本会は、2001年に創立し、辻 公美先生、中内啓光先生、岡野光夫先生、澤 芳樹先生という非常に懐が深く、見識・決断力・実行力を併せ持った素晴らしい歴代の理事長の強いリーダーシップの下、急速に発展致しました。この20年間で、本会は、ノーベル生理学・医学賞受賞者を輩出し、再生医療の実用化を進め、独自の理念に基づく宣言を行うとともに様々な政策提言を行って来ました。この様に、再生医療の基礎研究、臨床応用、社会実装に至る産・官・学を束ねる扇の要の役割を担う迄に成長し、この2021年の春に満・20歳を迎えます。生まれたばかりの赤ちゃんが成人するまでの時間が流れましたが、創立当時から本会に参画し、この学会が成長していく過程を垣間見ることが出来た一人として、感激も一入であると共に、この20周年と言うタイミングで理事長という大役と、この学会をさらに発展させる大きな使命を担い、身も引き締まる思いです。

この様な大役をお引き受けした時、やはり忘れてはならないのは、初心であろうと思います。20世紀末に急速に幹細胞生物学と再生医療が脚光をあびてきましたが、私もその頃、脊髄損傷の研究を中心に再生医療研究を始めましたが、研究成果をどの様に患者さんに届け、社会実装したら良いのか、判らないことばかりで、自分たちの研究室は無論のこと、所属する研究機関や既存の学会の中の情報交換だけでは、基礎研究を、臨床へ展開し、そして実用化するためには、とても十分なものではないと感じていました。幸い同じ志を抱く仲間達も多く、再生医学・再生医療に関わる様々な専門性を持つ仲間達が、確かな角度の情報を共有し、いわゆる「不治の病」とされた難病の新しい治療法を開発し、それを社会実装することをミッションとするそんなSocietyを作ろう!という機運が日の本(ひのもと)全体に広まり、ついに2001年春に、この日本再生医療学会が立ち上がりました。私は、一生あの時の熱気と感激、そしてその時感じたこの学会の使命を忘れることはないでしょう。

今、再生医療は、普及しその裾野を広げるとともに、ゲノム編集やオルガノイドやAI・データサイエンスなどの新しい技術の台頭とともにより深化が進んで来ており、益々多くの叡智を結集する必要が出て来ております。そして本会は、この創立20年目の節目に、これまで以上に日本の再生医療を牽引し、我が国が、再生医療における世界のロール・モデルとなり、世界から尊敬される立場になる様にして行かなければならないと思います。その為にも、同じ志を有する皆さまと力を合わせ、これを実現して行く所存であります。
皆さま、ご指導・ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

2021年3月11日
岡野栄之