日本再生医療学会

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2022.5.19

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幹細胞を用いた自由診療について~日本再生医療学会より患者・市民の皆様へ~

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日本再生医療学会 理事長 岡野栄之
同 広報委員会 委員長 高橋政代
同 生命倫理委員会 委員長 八代嘉美

 昨今、幹細胞治療に関する医師へのインタビュー形式の紹介記事や患者による治療の体験談が雑誌やネットメディアに掲載され、種々の症状が改善した、という記述が散見されます。そうした情報で登場する治療法は自由診療として実施されているものがほとんどです。
 日本では、国(厚生労働省)が治療法として公的に承認するためには、安全性と治療効果について、国が求める水準の科学的な検証を実施した上で、厳しい承認審査を受けることが必要となります。一方、自由診療は医師の側から提供する医療について適切な説明と、患者の同意にもとづいて実施される適法なものですが、厚生労働省による安全性と治療効果の審査を経ているわけではありません。
 すなわち、幹細胞を用いた自由診療は、国が有効性を確認した上で承認している医療とは別の枠組みで実施をされており、新規性の高い医療を受けられる反面、国が安全性及び治療効果を確認をしたものではないこと、公的な健康保険の適用がうけられず、治療の全額を自己負担せねばならない※※といった点もあります。受診をお考えの患者・ご家族の皆様は、こうした前提を踏まえ、医師からの説明をしっかりお聞きになり、ご検討いただくようお願いいたします。

以上

図 再生医療と法律との原則的な関係

   

※解説:我が国では、医薬品として再生医療を提供するためには、厚生労働省に申請して承認されなければならないことが医薬品医療機器等法(薬機法)で定められています。有効性や安全性などの審査は、厚生労働大臣から付託された独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が担い、国が求める科学的水準のレベルに達しているかが審査されます。自由診療で実施される再生医療はこうした内容を、国が確認しているわけではありません。そのかわり、国から設置の承認を受けた特定認定再生医療等委員会、認定再生医療等委員会が主体となって審査を行います。この審査業務は安全性の確認が主たるもので、前述のような高い水準の「有効性」を求めるものではなく、「妥当性」を確認することとなっています。また、国が承認しているのは委員会が「設置」されるところまでであり、提供される再生医療の内容自体に対して承認を与えているわけではない、という点に注意が必要です。

※※解説: 自由診療を受ける場合は、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)も含めて全額を自己負担しなければなりませんのでご注意ください。ただし例外的に、国が「先進医療」(一定の安全性と有効性が国により評価されてはいるがまだ保険適用となっていない医療技術)と認めた治療法については、その治療法にかかる費用以外の、通常の治療と共通する部分の費用に公的な健康保険が適用されます。

   

(参考)
平成二十六年厚生労働省令第百十号再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則
(再生医療等を行う際の責務)
第十条 医師又は歯科医師は、再生医療等を行う際には、その安全性及び妥当性について、科学的文献その他の関連する情報又は十分な実験の結果に基づき、倫理的及び科学的観点から十分検討しなければならない。
※「妥当性」としては、例えば、当該再生医療等の提供による利益が不利益を上回る ことが十分予測されることが挙げられること。
(厚生労働省医政局研究開発振興課長通知『「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法 施行令」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」の取扱いについて』より)