日本再生医療学会

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2017.3.6

  • 声明・ガイドライン等

日本再生医療学会声明(2017)

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―ナショナルコンソーシアムの構築―

再生医療は、これまでに治療法のない難治性疾患に苦しむ患者さんに明るい希望をもたらしています。日本再生医療学会は、たゆまぬ研究活動の中で再生医療の大きな可能性を示すとともに、その可能性を広く実現するため、関係各省庁、産業界への働きかけを通して、ともに再生医療の発展を支える基盤構築に努めてきました。再生医療の特性を盛り込んだ法体制は、日本が世界に先駆けて構築した制度でありますが、世界でもすでに取り入れられ始めています。これらの法律の適正な運用の元に再生医療の迅速で安全な発展をめざすことを改めて確認する必要があると考えます。

 

2016年のOSAKA宣言において、日本再生医療学会は、「普遍的治療」としての再生医療を目指すことを宣言しましたが、これは再生医療が一部の限られた患者さんだけではなく、誰もがその恩恵をうけることを目指す新しい時代に突入したことの宣言でありました。新たな分野である再生医療が普遍的治療として広く医療に浸透することは決して容易ではなく、長い道のりであることは当然ですが、すでに産業における鼓動を体感し、新たな医療分野としての大きな流れを感じるようになりました。このように一つ一つの実績を積み上げていくことで確固たる地位を築いていくことを確信しております。

 

一方、再生医療は、ますます多様化の道を歩んでいます。今、もう一度、原点に立ち返り、多様化の中の普遍的真理を追求することで、再生医療を受ける患者さんの立場に立った健全な再生医療のあり方を考えることは、日本再生医療学会の大きな使命と考えます。これまで個々の施設で実施された臨床経験によるデータは人類の財産であり、より広く、多くの施設・機関で共有し未来につなげていくために、日本再生医療学会単独ではなく、他の機関や学会との強固なネットワークとしてナショナルコンソーシアムを構築し、オールジャパンで再生医療の支援、教育、データの集積等の活動を推進していくことが必要であると考えております。

 

日本再生医療学会は、多様な立場を包括した議論を通して、日本の再生医療が世界の範となるべくその進むべき方向性を示し、オールジャパンで健全な再生医療の実現を広く浸透させるための努力を続けてまいります。

 

 

日本再生医療学会 活動目標

日本再生医療学会はこれまでと同様、より多くの患者が再生医療の恩恵に浴するため、以下の活動を通して再生医療の普遍化への強い意志のもとに、日本全体としての活動体制を構築し、再生医療の「研究」および「産業化」を推進する。

  1. ナショナルコンソーシアムの構築・オールジャパンでの再生医療推進
    わが国の再生医療の質を向上させ、さらに世界に貢献するよう、他の学会や施設・行政・産業界に働きかけ、オールジャパンで再生医療を推進するためのナショナルコンソーシアムを構築する。
  2. 法の遵守と、再生医療に対する技術的支援体制の構築
    再生医療実践のための安全性基準策定や加工受託制度の構築など技術的支援と情報提供を行う体制を構築し、再生医療が法の下に安全で適正に行われることをめざす。
  3. 規制科学の確立と人材の教育・育成体制の構築
    科学的合理性・妥当性に基づいた規制科学を確立し、再生医療のあるべき姿を示すとともに、世界の再生医療の途切れなき発展に貢献しうる人材を育成する。
  4. 再生医療臨床研究の情報集積と発信
    標準的な評価項目を用いてデータベース化された再生医療研究のためのデータシステムを構築し、再生医療に関する科学的・医学的情報を集積するとともに、国内外に発信し、「知の結集」と「知の拡大」をめざす。
  5. 再生医療を受ける者の権利の尊重
    再生医療を受けるすべての者の権利と利益を守り、再生医療により最大の恩恵を受けることができるよう体制を整備・強化する。
  6. 認定再生医療等委員会の質の向上
    関係各省庁との連携のもと、認定再生医療等委員会の審議や事務局活動内容の標準化及び教育を通じて、再生医療が適正に評価される体制を構築する。本課題は、委員会の質の不均一が懸念される中、新たなミッションとして掲げる。

 

 

以上

 

2017年3月6日
日本再生医療学会
理事長 澤 芳樹
副理事長 高戸 毅
および理事一同