日本再生医療学会

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2014.8.31

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STAP細胞研究に関するコメント

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いわゆるSTAP細胞に関する論文(Nature 505, 641-647, 2014; Nature 505, 676-680, 2014)が不適切な処置や画像使用などの行為により本年7月2日に撤回され、理化学研究所の「研究論文の疑義に関する調査委員会」(以下調査委員会)により検証実験が実施されています。当該行為は科学の健全性に対して社会に疑念を与えるものと考え、再生医療の将来に貢献しうる革新的研究活動においてこのような事態が起きたことは大変遺憾に思います。

 

日本再生医療学会では、これまで再生医療の実現化に向けて、二つの努力をして参りました。一つは関係当局に働きかけ、再生医療の実現化に向けた法律等の社会環境の整備を進めることです。そしてもう一つは、再生医療研究に携わる者が有するべき行動基準を策定・公表し、社会からの信託に値する環境を整備することであり、この二つの事柄は表裏一体をなすものでした。

 

昨年は「再生医療推進法」「改正薬事法」「再生医療安全性確保法」という三つの法律が成立し、一つ目の努力が実を結びました。また、二つ目の努力として、社会の期待に応えるために、再生医療人(現在または将来活動する研究者、医療者、実務担当者、事業者、学生等)の研究や業務の拠りどころとなる「再生医療人の行動基準」(以下行動基準)を策定し、社会から信頼される再生医療人の育成に向けて取り組む姿勢を明確にいたしました。その詳細は、行動基準「Ⅱ. 再生医療人の使命と守るべき価値」(学会ウェブサイト)を参照下さい。

 

上記論文に関しては、論文内容における不適切な行為の他に、当初行われた記者会見や記者発表資料の内容についても、先行するさまざまな研究成果との矛盾があるなど、その科学的信頼性や科学コミュニケーションの姿勢に問題があることを認識しています。政府が策定する第四期科学技術基本計画においても、「社会とともに創り進める政策の展開」を重視しており、政策の企画立案及び推進への国民参画の促進、科学や技術のコミュニケーションの促進を目指すことが明記されています。日本再生医療学会は、再生医療に関する研究等の成果や知識を適切に普及することを目指しており、再生医療人に適正な活動を求めるとともに、学会全体としても積極的かつ適切な社会とのコミュニケーションに努めることを重視しています。

 

以上より、日本再生医療学会としては、引き続き学会員全体が責任と自律性を持ち、社会的・文化的価値から逸脱することなく、再生医療に関する研究および臨床応用を実施して質の高い成果を創出すること、ならびに適正なコミュニケーションに努めることを通じて、社会の信頼を得るべく活動する所存であります。

 

以上

 

2014年8月31日
日本再生医療学会
理事長 岡野光夫
副理事長 澤 芳樹
生命倫理委員会委員長 西田幸二
および理事、生命倫理委員会委員一同