日本再生医療学会

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2013.3.21

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YOKOHAMA宣言2013

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我々は、先のYOKOHAMA宣言において、「再生医療研究者・開発者から規制当局への要望」として再生医療への適切な規制のあり方を求めてきた。宣言を受け、政府当局では、厚生労働省、文部科学省、経済産業省などの各省庁を中心にその縦の障壁を超えて議員立法、薬事法改正そして再生医療新法などの再生医療関連の法制化が進められている。我々の要望を取り入れ、再生医療の迅速な発展に寄与すべく対応されていることについて規制当局の努力を高く評価し、ここに謝意を示したい。

日本再生医療学会は、今後の新法の運用下において関係省庁との協力と連携を進め、一日も早く安全かつ有効な再生医療を患者さんに届けるという共通の目的を再確認し、細胞培養施設や、培養技術者・臨床研究医師といった場所と人の質を確保しつつ政府当局の活動を積極的に支援することをここに宣言する。

一方、一部の施設において「自由診療」の名の下に当局の規制から距離を置き、安全性の確認なく細胞治療行為が行われていることについては、マスコミにも取り上げられ、さらに欧米の主要科学誌にも掲載され、話題となっているところである。我々は、安全性及び有効性において科学的・医学的根拠を持たない細胞治療行為は、我が国の再生医療を発展させることはなく、むしろその全体への評価を貶めることにより発展を阻むものであると認識している。日本再生医療学会は、そのような一部の不適切な細胞治療行為をもって我が国の再生医療全体が評価されることに強く遺憾の意を表するものであり、我が国の再生医療の現状を正しく伝えるための更なる努力が必要であると考えている。それと同時に、そのような一部の施設に対して強く是正を求め、我が国における再生医療が、患者の安全確保を第一義に、普遍性の高い治療法へと発展することに全力で取り組んでいきたいと考えている。

再生医療研究者・開発者から規制当局への要望

昨年のYOKOHAMA宣言における規制当局への要望については、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の各省庁と委員会を通じて、再生医療製品は、従来医薬品・医療機器等とは異なる特性を持つことから、今後も科学的妥当性をふまえた適切な制度的枠組みを検討していくという観点から積極的に議論され、下記のことが議員立法、法改正や新法、そして省令通知の発令等により実現されつつある。

すなわち

  1. RCTにとらわれないデザイン設定の許容など、再生医療製品の特性に合った臨床試験の有効性評価を行う
  2. 承認審査段階で安全性が担保されれば「条件付き承認」や早期承認を行い、上市後の臨床評価を重視する
  3. 過度の規格値の設定を求めず、製品に利用される細胞の多様性を配慮する
  4. 医療法下における診療行為・臨床研究から、薬事法下における製造販売への途切れ無き移行をめざす

さらに、再生医療製品は従来医薬品・医療機器等とは異なる特性を持つことから、日本再生医療学会は規制当局に対し、今後も科学的妥当性を踏まえた適切な制度的枠組みを検討していくという観点で議論されることを要望するものである。

日本再生医療学会としての取組

本会では、YOKOHAMA宣言に基づき、既に以下の事項について推進してきた。

  1. 審査側と学会の情報交換会の開催(審査側への最新知識の提供)
  2. 審査への協力を目的とした専門分野ごとのプール委員確保のための調査を実施

さらに、再生医療の実現のため、行政と連携して以下の具体的事項に取り組んでいく。

  1. 再生医療製品承認審査のためのガイドライン作成・提言
  2. 再生医療製品の対象疾患に関するデータベース構築
  3. 臨床研究・治験用試験物製造・調製にふさわしい細胞調製施設ならびに細胞調製認定技士の認定制度と、技士教育システムの構築
  4. 患者の安全を第一義に、再生医療臨床研究を適切に推進する医師の認定制度の検討

以上

 

2013年3月21日
日本再生医療学会
理事長 岡野光夫