日本再生医療学会

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2019.10.28

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無届けの細胞移植が実施された報道に関する日本再生医療学会声明

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無届けの細胞移植が実施された報道に関する日本再生医療学会声明

 

2019年10月25日に、関西地区の元大学講師が再生医療等安全性確保法に基づく届出を行わずに細胞移植を実施した趣旨の報道がなされました。新聞報道によれば、研究施設内において細胞の採取・移植が行われており、患者に健康被害が発生した場合、適切な対応が可能であったかどうかも疑わしいと考えられます。今回報道された内容は極めて遺憾であり、患者保護の観点から、また法律の遵守の精神からも、決して容認できるものではありません。

 

新聞報道によれば、これらの行為は本年に入ってから行われたものとされています。すなわち、2017年に他人のさい帯血由来細胞が流通し、医師らが無届けで移植を実施した行為が安全性確保法違反として社会問題化したのちに行われたものであり、極めて悪質です。

 

再生医療等行為は法律に則り、適正に施行されるべきものです(注1)。再生医療等行為の受療を検討されている皆様には、再生医療等提供計画や手続き等がきちんと実施されていることを担当医師に確認の上ご検討ください。また、ご自身がうけようと考えられているものが、本会で開設しているインターネットサイト「再生医療ポータル(https://saiseiiryo.jp/)」でご確認いただくことも判断の一助になるかと考えます。当該サイトは、厚生労働省に届け出られている全提供計画を検索できるものです。

 

一方、日本再生医療学会で調査を行ったところ、今回報道された行為を行った人物が本会会員および本会が認定する認定医である可能性を確認しています。現状は当局の事実認定などを待つ段階ですので、会員名は公表しませんが、上記の行為の実施が確認できた段階で、速やかかつ厳正な対応をとる必要があると考えております。

 

日本再生医療学会では、2017年の違反事例が発生したのち、入会時審査の厳格化や、既存会員に対しては、会員資格の継続にあたって法制度の遵守を確認するプロセスを導入しました。また、認定医教育でも法的・倫理的・社会的課題に関する教育研修の機会を拡充してまいりました。今回の事例に会員が関与した可能性があることについて慙愧の念に耐えないものであり、遺憾の意を表するものです。

 

私共は今回の事例を重く受け止め、社会の皆様からの期待や信頼を回復できるよう、学会員に対しては法律の遵守を求めていくとともに、学会員教育のさらなる充実を図り、不断の努力を重ねていく所存です。

以上

 

一般社団法人日本再生医療学会

理事長 澤 芳樹

 


注1;本事例は、再生医療等の安全性の確保等に関する法律に従い、第2種再生医療等に分類され、第2種再生医療等提供計画に従い、特定認定再生医療等委員会の意見を聴いた上で、厚生労働大臣に提出して実施されるべきである。また、患者に対して、文書で説明と同意を得ること、個人情報保護、疾病等の発生時の報告義務等が定められている。