日本再生医療学会

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2024.3.20

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NIIGATA宣言

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日本再生医療学会は2001年に設立され、再生医療を標榜する唯一の日本医学会分科会として「あらゆる知を結集し、再生医療の革新と普遍化により、全人類の幸福と未来に貢献する」ことをミッションとし、安全かつ有効な“真心”のこもった再生医療を迅速に患者さんに届けるため、産学官の垣根を超えたオールジャパン体制で科学的、技術的および社会経済学的な学際的諸課題に取り組んできた。2014年の再生医療等安全性確保法および医薬品医療機器等法の制定から10年が経過し、わが国の再生医療研究の成果はそれまで治療法の存在しなかった疾患を含む多様な領域で着実に臨床の現場へ還元されてきたが、同時にその一般化に伴い、わが国の国際的プレゼンス維持を確かなものとするために要する研究・開発費の確保が現状では十分とは言い難い問題や、有効性が確認または示唆されても提供側と患者側双方の経済的理由により治療の持続的提供が困難な例、安全性に関する科学的合意が不十分な再生医療およびその応用技術が自由診療下で患者さんに提供される例など、新たな課題も顕在化している。

本会は多様な背景を持つ6,000名を超える会員を擁する日本最大かつ総合的な再生医療研究者コミュニティとしての認識を新たにし、次の10年で再生医療を標準的な治療選択肢として盤石なものとするため、次の行動目標により研究・開発・規制の全方位を対象に活動を強化していく。

  1. 基礎研究力を強化し、iPS細胞に続く日本発の革新的科学技術を涵養するとともに、その臨床応用への円滑な橋渡しを行うための支援を行い、その集合知をさらなる研究開発に展開する。
  2. 日本医学会および各基盤学会等の分科会と連携し、再生医療等製品および再生医療等安全性確保法下で提供される再生医療等のエビデンスを蓄積して科学的評価を行うプラットフォームを構築する。
  3. 患者さんによる医療機関選択時の指標とするため、一定水準を満たした再生医療等の提供機関を認定する再生医療認定施設制度を開始し、全国の医療機関およびその細胞培養加工施設の品質を向上させる。本会が作り上げた制度、教育システムをプラットフォームとして世界へ展開する。
  4. 各地に形成された再生医療等関連機関集約拠点との積極的な交流を行い、本会の諸事業で構築されたネットワークを活用することにより、全国規模と地方規模の双方のレイヤーにおける情報交換の基盤を確立する。
  5. 産業界と強く連携し、基礎研究から社会実装まで切れ目のない再生医療等の開発と応用の循環を構築することにより、再生医療等製品を医薬品や医療機器と並ぶ信頼できる医療として確立するとともに、その成果を世界的に発信し、わが国の国際的優位性を持つインバウンド・アウトバウンド産業として発展させる。
  6. 細胞外小胞等の萌芽的段階のままで提供される再生医療およびその応用技術について、根拠に基づいた適正性の認められたものとそれ以外とを峻別可能にするため、科学的見地からの議論と評価を行う仕組の社会実験を行い、治療として提供される再生医療等の品質の向上を図る。
  7. 患者さんや医療機関が適切な治療法にアクセス可能となるよう、新興領域である再生医療等に関する透明性の高い情報提供体制を強化するとともに、より良い医療を受けることを願う患者さんとそれを提供することを願う医療者・研究開発者の双方にとって持続可能な医療を実現するために、医療経済の合理的あり方や社会受容の基盤構築を包含する新たな社会的枠組みを導出する。
  8. ここに掲げる目標を達成するために、多様な人の交流と対話を通じた新たな知と価値の創造とその継承を重視し、これを実践するための取り組みを続ける。

以上

2024年3月20日
日本再生医療学会
理事長 岡野栄之
副理事長 西田幸二
第23回総会会長 寺井崇二
および理事一同