日本再生医療学会

ニュース

2016.10.27

  • 声明・ガイドライン等

日本再生医療学会の「ゲノム編集」に対する考え方について

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ゲノム編集技術は、遺伝子の自由な改変を簡易に行うことができる画期的な技術であり、新たな学術的知見の獲得や医療への応用が期待される。現在の技術水準は、その特異性と効率のさらなる向上を目指して、研究開発が行われている段階にあり、特に体細胞に対するゲノム編集技術は、治療法の確立されていない疾患にとって、画期的な治療法開発の基盤技術となる。
一方、編集した遺伝情報を次世代へ引き継ぎうるヒトの生殖細胞および胚のゲノム編集に関しては、慎重に取り組まなければならない。そのため今後、倫理的、法制度的、および社会的側面からの慎重な議論が十分になされ、ゲノム編集が精度の高い技術に向上するまでは、ヒトの生殖細胞や胚のゲノム編集の実施は基礎研究の範囲にとどめるべきである。
このような新しい技術については、研究者と社会が情報を共有し、対話のうちに研究を推進していく必要がある。また、科学的知識を基盤とし、研究者も自らに高い規範意識を課す自律の構築が重要と考える。振り返れば、遺伝子組み換え技術の黎明期、その開発者ポール・バーグがジェームズ・ワトソンらと共同で遺伝子組み換え技術のガイドライン策定のための国際会議を呼びかけ、それはアシロマ会議という形で結実し、科学者自らが研究のモラトリアムという厳しい自律を課すことができること、そして合理的な研究のルールを策定できることを示している。
以上のような観点から、日本再生医療学会では、先に日本遺伝子細胞治療学会、日本人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会が発出した「人のゲノム編集に関する関連4学会からの提言」を尊重し、学会内での議論を深め、引き続き研究者、医療者、法学者、倫理学者、社会などと意見交換を進めていきたいと考えている。

 

 

以上

 

日本再生医療学会
理事長 澤 芳樹
生命倫理委員会委員長 森尾友宏
理事一同