提言・声明等

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日本再生医療学会声明(2011-3)

今回、金沢大学において、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に違反する臨床研究が実施されたことが明らかになりました。加えて、当該研究において、残念ながら当学会に所属する研究者が関与していることが判明しました。

本会は日本における再生医療研究の中心的な学会であり、再生医療の臨床応用に対しても、積極的に推進してまいりましたが、会員に対しては患者の権利を尊重し、また倫理規範から逸脱しないことを繰り返し周知しており、このような事態が発生したことは慙愧の念に耐えません。

本年度からは、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省が基礎研究、臨床研究、周辺技術等開発、知財戦略等について連携を行い再生医療の早期の実用化を図るために「再生医療実用化ハイウェイ事業」を実施することで、再生医療に係る制度を含む基盤の構築に向けて新しい試みが開始されます。

このような背景の中で、再生医療学会は医療の進歩のために必要なさまざまな挑戦を推進・奨励しています。しかし、ヒト幹細胞を用いた医療は、難治性疾患等の有効な治療法の確立へとつながるものであると同時に、現時点ではまだまだ安全性を含む様々な課題が残されています。

そのため、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に定められた精神を熟知し、各機関の医学倫理委員会の審査などに基づき、患者に対する健康被害の発生や、国民の皆さんの幹細胞治療に対する誤った認識を生じさせるような行動は厳に慎まねばなりません。そこで、本会は行政当局と連携し、

  1. 未だ研究段階である細胞・組織等を用いた再生・細胞医療等を、臨床研究から治験、診療報酬評価に至るまで遅滞なく推進する体制・制度を確立し国民への早期の技術還元の実現を図ること
  2. 患者の安全性を無視し、権利を侵害するような行為を排除するとともに、日本医療の信頼を根幹から揺るがすような「未承認の再生・細胞医療」に対して医療法、薬事法等の改正等を推進し、適切な新しい医療提供体制の構築による患者(国民)の安全性を早急に確保することを強く推進していきます。

本会としては、会員に対し、患者の安全性の確保と早期の再生医療の適正な実用化のために、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」をはじめとする各種法令、通知、告示、ガイドライン等を遵守することを再度周知し、二度とこのような事態が発生しないよう、指導・教育を強化していきます。

2011年8月9日
日本再生医療学会
理事長 岡野光夫
生命倫理委員会委員長 岡野栄之