提言・声明等

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再生医療等安全性確保法違反に対する日本再生医療学会の考え方

厚生労働省は2017年2月20日付で、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、埼玉県内のクリニックに対して再生医療等の提供の一時停止を命じる緊急命令を出しました。また、昨年10月31日にも、2つのクリニックが同法に違反する行為を行い、同様に緊急命令を受けています。日本再生医療学会は、こうした触法行為について、極めて遺憾であり断固容認しないこと、また再生医療の安全性・有効性を高めるため、会員に対する教育や周知をこれまで以上に徹底していくことを表明いたします。

 

今回、厚生労働省の立入検査によって、当該クリニックが同法が定める再生医療等提供計画の提出を行わないまま、第三者の臍帯血(さいたいけつ)を用いた再生医療を実施していたことが確認されています。第三者の細胞を患者に投与する行為は、同法で「第一種再生医療等技術」として分類されています。第一種再生医療等技術は「人の生命及び健康に与える影響が明らかでない又は相当の注意をしても人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれ」があるものとして、(1)高度な審査能力を持つ「特定認定再生医療等委員会」の意見を聴いた上で、必要書類を厚生労働大臣に提出し、(2)厚生科学審議会の意見に基づく安全性等の確認、を受けなければ実施できません。つまり、現状の科学的常識に照らして、有効性と安全性のバランスを慎重に検討されるべき医療行為が、無届でなされた、ということを意味します。

 

また、昨年10月の例では、実際に提供する再生医療等技術が届け出の内容から変更されていたにも関わらず、必要な変更手続の届け出を行っていなかったこと、また患者に投与する細胞を加工するにあたり、製造許可をとっていない、あるいは製造する承認を受けていない業者に委託するなどの行為がありました。これらの件は、「第三種再生医療等技術」として分類される、比較的リスクの低いものではありますが、適切な届け出が行われなかったり、投与される細胞の加工調製が、届け出されていない施設で行われたりすることは、安全性確保の観点からは、絶対に許すことのできないものです。

 

これまで、本会は2014年に「再生医療人の行動基準」を定め、会員に対して患者の安全性の確保や法律・ガイドラインの遵守を求めてきたほか、2015年からは再生医療等に携わる医師・歯科医師や細胞培養士の学識・経験を評価し認定する「再生医療認定医制度」を設け、再生医療の質を高めるべく制度を拡充してまいりました。さらに今回の例を重大な問題として捉え、会員教育のさらなる充実を図り、安全な再生医療を実現・普及できるよう、不断の努力を重ねていく所存です。

 

一方、再生医療はこれから大きく発展するものであり、国民のみなさまにおかれましては、不明な点も多くあることと思います。もし受診したクリニックにおいて、細胞の移植やそれに類する治療法を勧められた場合、法律に基づいた対応を行っているか、日本再生医療学会の認定医であるか、といったことを医師にご確認ください。もし不安・不明な点がある場合は、かかりつけの医師にご相談されるなど、新規の治療法を受けるべきかの判断については慎重に検討されることを推奨いたします。触法行為や不誠実な医療の排除のためには、わたくしたち自身が自らを律するのはもちろんのこと、国民の皆様の厳しい視線を絶対に欠かすことができません。再生医療という新しい医療を社会とともに構築していけるよう、国民の皆様のお力添えをお願いいたします。

 

一般社団法人日本再生医療学会