産学連携モジュールで開催するイベントについてご紹介します。
再生医療テクノオークション
今年度は、新潟で開催された第23回日本再生医療学会総会期間中の2日目に、「第6回 再生医療産学連携テクノオークション」を開催いたしました。
今回は、非常に多くのご応募をいただきましたため、1会場で2ステージを設置し、大いに会場を盛り上げました。



また下記にご発表いただいたシーズのご研究概要を記したレジュメをご案内いたします。
今後の再生医療の産業化の契機のひとつになれば幸いです。
< ※画像クリックでPDFをダウンロードしていただけます。>
なお、発表者とのコンタクトをご希望の方は、当会事務局(industrialization@jsrm.jp)またはレジュメに記載されているご連絡先へ直接お問い合わせください。
STAGE-A
A-6

再生医療製品の航空機搬送における放射線被ばくを防ぐ技術の必要性
青山朋樹 (京都大学大学院)
第5回 再生医療産学連携テクノオークション(2023年3月23日)開催報告
2023年3月23日(木)に、国立京都国際会館で「第5回 再生医療産学連携テクノオークション」を開催いたしました。
今回は久しぶりのオンサイト開催となり、19シーズもの発表に加え、再生医療等の知財に関する専門家による知財相談ブースも開設しました。
発表シーズの数に合わせて広めの会場をご用意させていただきましたが、立ち見となったご聴講者様もいらっしゃるほど盛況となり、恒例の「アピールタイム」も活発な情報交流やコミュニケーションを行っていただきました。



また下記にご発表いただいたシーズのご研究概要を記したレジュメをご案内いたします。
今後の再生医療の産業化の契機のひとつになれば幸いです。
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なお、発表者とのコンタクトをご希望の方は、当会事務局(industrialization@jsrm.jp)またはレジュメに記載されているご連絡先へ直接お問い合わせください。
第4回 再生医療産学連携テクノオークション(2022年3月18日)開催報告
2022年3月18日(金)に、「第4回 再生医療産学連携テクノオークション」を開催いたしました。
今回も、完全web開催となりました第21回日本再生医療学会総会に合わせ、恒例の「アピールタイム」には、シーズごとに専用ブースを用意し、コミュニケーションの場としてご活用いただきました。
また下記にご発表いただいたシーズのご研究概要を記したレジュメをご案内いたします。
今後の再生医療の産業化の契機のひとつになれば幸いです。
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再生医療知財セミナー
2023年度 再生医療知財セミナー(2023年9月12日)開催報告
日時
2023年9月12日(火)13:30 – 16:00
座長

畠賢一郎
日本再生医療学会 理事
再生医療イノベーションフォーラム 代表理事副会長
株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング 代表取締役 社長執行役員
講演

講演Ⅰ:「再生医療実用化に向けたアカデミアの知財戦略」
石埜正穂
札幌医科大学大学院医学研究科・医学部先端医療知財学 教授
札幌医科大学付属産学・地域連携センター 開発部門長

講演Ⅱ:「技術移転機関から見た創薬Seedsの企業評価ポイント」
矢野慎一
テクノネットワーク四国

講演Ⅲ:「研究者の身の回りの知財-細胞授受に係るMTA・医工連携の知財など」
壬生優子
壬生弁理士事務所

講演Ⅳ:「再生医療にまつわる知財戦略」
内山 務
内山務知財戦略事務所

司会・パネリスト
質疑応答・総合討論

次回イベント「知財・技術座談会」のご案内
渡部正利喜
日本再生医療学会
株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング
配付資料
2022年度 再生医療知財セミナー (2022年9月20日) 開催報告
日時
2022年9月20日(火)13:30 – 16:00
座長・司会

畠賢一郎
日本再生医療学会 理事
再生医療イノベーションフォーラム 代表理事副会長
株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング 代表取締役 社長執行役員
講演



講演Ⅲ:「シーズ導出につなげるための知的財産とは」
河内 幾生
再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)
富士フイルムホールディングス株式会社 知的財産部 国際標準化推進室

「知財・技術座談会」のご案内

渡部正利喜
日本再生医療学会
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング
第2回 再生医療知財セミナー(2022年2月4日)開催報告
日時
2022年 2月 4日(金)10:00 – 12:00
座長

畠 賢一郎
日本再生医療学会 理事
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 代表取締役 社長執行役員
講演・講師紹介

講演Ⅰ:「アカデミアー企業連携におけるLessons Learned -企業研究者の立場から」
小清水右一
第一三共株式会社 細胞治療研究所 所長

講演Ⅱ :「再生医療・細胞治療・遺伝子治療における知財戦略」
水落登希子
慶應義塾大学臨床研究推進センター イノベーション推進本部

講演Ⅲ:「再生医療にまつわる知財戦略」
内山 務
内山務知財戦略事務所 所長
第1回 再生医療知財セミナー(2021年12月16日)開催報告
日時
2021年 12月 16日(木)10:00 – 12:00
座長

畠 賢一郎
日本再生医療学会 理事
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 代表取締役 社長執行役員
講演・講師紹介

講演Ⅰ:「競争領域及び非競争領域における標準化戦略」
河内 幾生
富士フイルムホールディングス株式会社 知的財産部 国際標準化推進室

講演Ⅱ:「アカデミア(ベンチャー)における知財戦略」
石埜 正穂
札幌医科大学大学院医学研究科・医学部先端医療知財学 教授

講演Ⅲ:「研究現場から考える再生医療の知財」
壬生 優子
壬生弁理士事務所
再生医療知財セミナー 事前座談会(2021年10月22日)
令和3年度 AMED事業において、「再生医療知財セミナー」を開催に先駆けて、再生医療に関する知財について、アカデミアならびに企業の知財担当、そして弁理士の先生をお招きして事前座談会を開催しました。
再生医療にまつわる知財戦略について、問題点やその解決の示唆など、それぞれのお立場とご経験から、幅広く討論いただきました。
司会

畠 賢一郎
日本再生医療学会 理事
株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング 代表取締役 社長執行役員
アカデミア

石埜 正穂
札幌医科大学大学院医学研究科・医学部先端医療知財学 教授

水落登希子
慶應義塾大学臨床研究推進センター イノベーション推進本部
弁理士

内山 務
内山務知財戦略事務所 所長

壬生 優子
壬生弁理士事務所
企業

河内 幾生
富士フイルムホールディングス株式会社 知的財産部 国際標準化推進室

小清水右一
第一三共株式会社 細胞治療研究所 所長
〇アカデミア知財戦略における課題
畠 : 本日はお集まりいただきありがとうございます。まずはアカデミアの立場の先生方から、アカデミア知財戦略における課題について、何か思っておられることがあれば教えてください。
石埜 : まずは知財戦略に附随した多くの問題があることにすら気づかない、有用な特許が取得できていないと、強く感じています。
知財については、これまで低分子医薬は企業が取得するしかなかったのですが、再生医療を含めた新しいモダリティの製剤については、アカデミアが取得する必要があるものが多いと思うんですよね。
企業は知財戦略が明確なのですが、アカデミアはそうではなくて、何が出るか分からないところから凄い技術や発見が出たら、すかさずキャッチすることができるか否かがすごく大きいので、出来れば医療の研究を理解している弁理士がしっかりサポートして、研究の early な段階から適切に知財戦略を立てて取得していかなければいけないですよね。
一方、研究者の知財リテラシーが低いことも問題です。官民ともに、特許戦略の必要性に気が付いていないので、知財の管理体制が整っていないですし、真の専門家を張り付けていない。
これらが認識されていないことに強い危機感を感じているので、それを改善すべく、様々な形で活動をさせていただいているところです。
畠 : 石埜先生、ありがとうございます。研究の 早期から積極的に関与しなくてはならないという問題と、それから研究者の知財リテラシーですね。あとは専門の弁理士さんの起用とか仕組みの問題でしょうか。
水落 : 確かに早い段階で知財の相談に来てくださるアカデミアの先生とそうではない先生がやっぱりいらっしゃって、相談に来てくださらない先生の成果の中に、特許性の高い成果が含まれていることがよくあります。しかしながら、数百人規模の教員が存在する総合大学内で適切にシーズを拾い上げるにも限界があります。それに良いシーズがあったとしても、大学の場合、それを世に出すための予算も限られていて、特に外国出願は非常に困難です。
企業だと、ポートフォリオのような、周辺特許をまとめて取得するといった戦略がとれますが、アカデミアはまずそのような戦略がとれないので、どうしてもそれが弱点になってしまっています。
そういう意味では、早い段階でアカデミアは企業と連携する、といった戦略が一番よいかと思うのですが、連携のための方法や窓口が機能していないと感じているところです。
内山 : 私は独立する前、長年、製薬企業で知的財産に関する業務を担当していたのですが、アカデミアと共同研究などの形で連携をする際、アカデミアからすでに出願された外国特許明細書の中に、不適切な記載があったり適切な記載がなかったりして、その出願や関連する別の出願の権利化のために非常に苦労した経験があります。そのようなことを防ぎ、また企業の視点からの知財戦略を反映させるためにも、水落先生がおっしゃった、「企業と早くから連携すること」は非常に重要なことだと感じていました。
畠 : なるほど。ちなみに内山先生がおっしゃった不適切な記載がなされるようなことが起こってしまうのは、担当の先生がその特許の価値をあまり理解していなかったということでしょうか。
内山 : そうですね。「これは弁理士や学内の特許担当者に聞かないと」というタイミングを計っている研究者の先生方は、特許担当者や学外の弁理士が相談に乗れますので、それでいいと思うんです。逆にそのような意識がなく、scientific な視点のみで勝手に突き進まれると、特許的にはもう取り返しがつかない状態になってしまいます。本来、アカデミアの意義はそうであるとも言えることから、戦略という言葉がアカデミアにとってはあまり馴染まないのかもしれないと思います。
それに、特許は論文とは違って、事業化のためのツールでしかないのに、事業化の案がない中で戦略の立てようがないというのが本音です。
水落 : 若い先生方は論文であるとか学位であるとか、そういうことが優先されるので、出願のタイミングを考慮しないといけない場合があることが一つと、先生方の中には、成果を世に出したいという意欲はお持ちだとしても、そのために特許を取得するという手続きについてよく分からないので煩わしいと思われる先生もいらっしゃいます。今、お話を伺っていて、「特許に対するモチベーション」というキーワードが根底にあるように感じました。
企業の場合には、特許で自社の製品をまず守る、それによってその事業が成り立つわけですが、大学の場合には、論文数で評価される、ということもありますので、特許を取るよりも論文を書くほうが学位に繋がるとか、優先順位が高いことがあるのかなと。
特許で新しいものや技術を守るということが適切に評価されないと、モチベーションを維持できないと思います。
畠 : 壬生先生のお感じになられている課題意識はいかがでしょうか。
壬生 : 私自身は、研究所の真横で、弁理士として特許の相談を受けてきました。私が担当させていただいた研究者は、知財の意識の高い先生なんですけども、むしろ私があまり出願をしないようにとアドバイスをしていたことがあります。再生医療という分野の研究室だったので、実際に使う技術、活用する技術であることを冷静に考えて、基礎研究的なものと応用研究的なものとを混同させずに考えることが、非常に大事かと思っています。
そこで、基礎研究のレベルのもので、まだ応用に至らないものについては出願はしない、という方向で私は助言をしておりました。そして特許出願をする段階にきたときには、どの程度のクレームを設定するかという話になるわけですが、研究者の言う通りに特許調査をしていると、膨大な数になるんですね。
畠 : やはり共通していることは、戦略的なアプローチですね。何もかも出願したら今度は費用が膨大になるので、先生の戦略によってコントロールされているっていうイメージですよね。
内山 : 一方で、公的グラントを取るために出願しておけばいい、というケースもあって、それも問題かと思っています。
畠 : 確かに、知財の取得状況は公的な研究助成の審査基準になることがありますよね。
〇企業×アカデミアにおける知財連携について
畠 : 次に、企業の立場からアカデミアとの知財連携についてお感じになっておられることをお聞きしたいと思います。小清水先生、いかがでしょうか。
小清水 : 今お話しが出てたように、官民の知財戦略に対する考え方についてはギャップを感じています。
出願のタイミングやその内容、深さ、あと広さ、そして企業側からすると、応用の可能性が見えているのであれば、権利範囲等が強固な特許を適切に取得してほしいと思っています。
しかしながら、アカデミアの先生方の使命・タスクとして、サイエンスをより深めて進めることが重要ですので、実際に共同で研究を進める際には、ジレンマを感じることが多々あります。
そのジレンマに対してどのように折り合いを付けるか、我々も十分な経験やノウハウを持っていれば問題ないのですが、一緒になって経験し、勉強しているような立場だと、ともすると研究の方に一緒に引っ張られてしまって、苦い経験をしていることは多いです。
畠 : そう考えると、かなり早い段階から企業と一緒に研究をやっていくという重要性もさることながら、一方で、かなり早い段階から引っ張り回されているというリスクもあり、非常に複雑な状況をつくりだす危惧もあるという理解でよろしいでしょうか。
小清水 : はい、そして企業側からも十分にリソースが負担できるのかというと、実は時間も費用も限度があります。戦略的に進める重要性は理解しているのですが、特許が多く存在していればよいというものでもないと思います。
我々も基礎研究からのシーズを育てようとしたときに、可能な限り幅広く特許を取得したいと思うのですが、企業側にも限界のようなものがあるのかなと思います。
河内 : 企業においても、再生医療に限らず、例えば商品開発部門と基礎研究部門など、担当部門によって特許に対する考え方の温度差はかなりあるケースがあると思います。
小清水先生がおっしゃったように、基礎研究をやっているところは広く特許を取得しようとしますが、実際にある分野で商品化を検討しようとしたときにはすでに先行例があって、その結果、足枷になることが生じかねないということは往々にしてあると思います。
特に、ある課題に関連する部門が多岐に渡る場合において、知財戦略の統制が取れているか否かが、企業でも課題として存在していると思います。
畠 : ちなみに内山先生の特許事務所では、アカデミアの先生から知財に関する質問とか相談を受けることはよくあるのでしょうか。
内山 : 事務所設立にあたりアカデミアやベンチャー企業の知財戦略について支援します、と標榜したことなど、わりとありますね。具体的な発明ができたので特許出願を、といった、いわゆる弁理士的な仕事もありますが、「A会社とこの内容でアライアンスを組んでいますが、B会社にも興味を持っていて、どのように切り分けたらよいか」とかですね。
畠 : パテント活用の問題ですね。
内山 : はい。また、ある先生は、「基礎特許を出願済みだけど、パテントのポートフォリオをしっかりと設定してより強固な特許網にしていくにはどのようにすればよいか」ですとか。
ベンチャー企業を立ち上げようとしている先生ですと、利益相反や、臨床データの取扱いについて質問をしてくる方もいらっしゃいます。そして、自分がこういう発明したけど、いつ・どのように特許出願をした方がよいかという質問が多いです。
畠 : なるほど。ちなみに壬生先生、先ほどアカデミアの先生方とのやり取りで、これからある知財・特許を取得したいという単純なものだけではなくて、例えばパテントマップをどう考えるか、ですとか、いわゆる戦略に近いようなご相談を受けられることってあるのでしょうか?
壬生 : 基礎原理的なところを研究されている先生方と、臨床試験に近いところに携わってらっしゃる先生方とは異なる知財の取り組み方になるのかな、と思いました。
私が関わってたのは臨床研究に近いところで、すでに明確なゴールがあって、その治療のために研究開発を一直線に行うという方針でしたので、いろいろ悩むほどの知財戦略というのは特になかったと思います。
ただ競合については、詳細に調査を進めていました。
畠 : なるほど。わかりました。
大学の先生方お二方にお伺いしたいのですが、大学外の弁理士の内山先生、壬生先生が受けている相談の内容と、先生方が大学で研究者から受けている相談と、違いはありますでしょうか?
石埜 : 先程からの知財戦略の話にちょっと戻るのですが、企業は、自分の製品を守るためにポートフォリオをつくって特許戦略を策定します。一方のアカデミアは、大学ごとに特許に対する考え方が異なるということもありますが、基本的にアカデミアは革新的な技術を生み出すのが役目ですから、今まで誰も思いつかなかったようなユニークな研究成果について、如何に有効に権利化していくか、というのがアカデミアの知財戦略ということになると私は考えています。
これを実現させるために、まず研究者に知財リテラシー教育を施す必要があります。知財に一定の理解がある研究者たちは 研究のearly な段階で知財部に相談を持ってきてくれるので、その段階から、良い特許と良い論文を作り上げるためのサポートをする。実用化のためには、特許と論文の両方が重要です。さらに、いずれ臨床試験もしなければならないので、そのためのエビデンスの取得についても、その時から考えていきます。そういったことの相談を総合的に受けられるような体制で特許取得も含めたシーズの熟成を進めていくのが理想と考え実行しています。
ちなみに、すべての「発明相談」を権利化につなげることは容易ではないですし、その必要もありません。開発に向かない、潜在性の低いものについては、権利化を考えずに論文執筆を進めてもらうことも非常に多いです。このように、相談内容をすべていったん吟味したうえで、その一部に注力して開発シーズとして育てることが必要と思います。
畠 : なるほど。そうすると早期の段階から企業と連携するということは、一つの局面でもありますが、もしかしたら違う可能性があるということでしょうか?
石埜 : それはどういうモダリティであるか、中身次第ですね。例えば再生医療は新しい分野なので、低分子薬と違って、必ずしも企業に知財の蓄積があるとも限りません。
水落 : 再生医療、細胞を対象にした場合は、ある程度の成果を得るまでは、アカデミア主導で進めた方が効率的である場合もあります。事業化のストーリーを構築しながら知財を発掘できるのが理想的だと思います。
臨床研究ですごくお金が掛かる時期のもう一つの手段として、今、ベンチャーを起業するという流れが多くあります。企業さんに負担していただけない場合も結構ありますので、VC(ベンチャーキャピタル)や GAPファンドの導入などの方策っていうのも最近はあるのかなと思います。
内山 : 最近、いくつかの大学ですとか、大学発ベンチャーとの仕事の中で、VC が due diligence の一環として、最終的にどのようなクレームで登録されて、どれだけ独占性があるのかを確認してきたことがありました。例えば取得した特許権に価値がなかったら、VC から資金調達できないわけです。
そのような視点からも、石埜先生のおっしゃるようなシーズの育て方が大切だと思います。アカデミアはその先生がやりたいことを決められるので、ビジョンによって、知財の育て方が違ってくるのかな、と思います。
石埜 : いずれにしても、開発研究をしなければならないっていうのが、医学の分野の宿命なので、研究の担い手が重要になりますよね。
内山 : もう一つ、産学連携でもアカデミアの共同研究でもなくて、学学連携とでもいいましょうか、産業界に持っていくためのアカデミア間の連携も重要かなと考えています。
Scientific な共同研究はたくさんされていると思うんですけど、例えば POC (Proof of concept) の確認くらいまでアカデミアで固めてくれると、産業界も手を付けやすいかなと思います。
畠 : アカデミアで熟成される点と、企業との早期の連携の点はトレードオフの関係ですね。よくわかりました。
さて、今度は少し企業側にも話を聞きたいと思います。先ほど、企業・アカデミアの知財連携の経験が足りないという話もありましたが、現状でアカデミア側の知財が企業にうまく伝わっているとお考えでしょうか。
小清水 : 今は比較的に、アカデミア側からの情報発信の場が構築されてきてはいますが、企業側の情報収集が十分に網羅されているかというと、たぶん出来てないと思います。
あまりシステマティックに情報を拾い集められるような状況にはないので、どちらかというと、知り合いの先生や、以前お付き合いのあった先生方からご紹介をいただくようなことが、まだ多いのかなと思います。
河内 : アカデミアの方々の中ではまず、良いものが出来たら、それで臨床もやりましょう、そして臨床まで行ったら次は企業の方へ、といった流れが想定できるわけですが、その時にモノと製造プロセスをどう評価するかというところなどは、協業する場合の課題になるところとして意識しています。
畠 : たしかに、製造工程まで意識したような発想は、アカデミアの先生方の意識にはなさそうですよね。
水落 : 一点よろしいでしょうか。私は企業さんから、どういう枠組み、どういう体制をとれば、大学の知財にアクセスしやすいか、というのをお伺いしてみたいです。
小清水 : そうですね、いくつかの大学様にやっていただいてると思うんですけど、シーズのリストを展開していただいてるところがあります。そういったものは、一通り目を通しています。また大学もいくつかのチャネルを持っています。私は、先生方のような方から来る場合もありますし、学会で知り合った現場の先生方から情報をいただく場合もあります。
畠 : 壬生先生はお仕事の中で、かなり研究室と深いお付き合いがあると伺いましたが、たとえば企業に声掛けしたりとか、一緒に企業となにか共同で知財を出す手助けをしたりだとか、そんなご経験ありますか?
壬生 : 研究者の先生が組んだ枠組みの中の企業さんと共同研究する中で共同出願という流れがありましたけれども、研究所が単独で行ってきたものに企業を呼び込むということはなかったです。
畠 : 内山先生も、企業を紹介するというのは、あまりないですかね。
内山 : 紹介というのはあまりないですね。どちらかというと、壬生先生と一緒で、紹介とかがあったあとで「共同研究や共同出願をやりましょう」となったとき、そのライセンスの交渉をお手伝いしたことはあります。
石埜 : アカデミアと企業、相互に理解する必要があるのに、お互いが理解しようとしないことは問題意識として感じています。
内山 : 企業ももちろん技術は持っていますが、基礎的な技術については多くの場合、アカデミアが保有しています。
アカデミアは基礎的な技術をバケツに入れて、企業は応用技術と資金をバケツに入れて、そのバケツの中をかき混ぜながら世の中に一緒に貢献しましょう、っていうのが正しい姿だと思います。
そこで重要なことは、やはりリスペクトして相手を理解することに尽きると思います。
水落 : リスペクト、とてもいい言葉だと思います。お互いの事情を理解しながらできるっていうのが一番良いのではないかと思います。
大学が大学によって違うように、企業の方の中にも、企業のそれぞれの体質とか仕組みがきっとあると思います。
小清水 : 先生方の science が優れていることが多いので、そういう意味ではリスペクトしています。逆に謙り過ぎちゃって even にお話が出来ないようなところもあったりはしますね。
畠 : 今後はそういう仕組みも必要だということですね。
〇再生医療に関する知財戦略の特徴と課題
畠 : 次に、再生医療に関する知財戦略の特徴と課題についてもお聞かせいただければと思います。
壬生先生、ご経験の中で何かお感じになったことありますか?
壬生 : 企業であれば事業戦略のもとに知財戦略っていうのがあると思うのですが、再生医療でいえば、事業戦略というのが治療になるのかなと思いました。その目指す治療が、先ほど先生方がおっしゃったように、企業とアカデミアの研究者の中で共有ができていれば、スムーズにいくのではないかという気がしています。
畠 : 事業戦略が重要ということですが、石埜先生、先生からご覧になって再生医療に特化した特徴をどのようにお考えですか?
石埜 : 今までの医薬といえば低分子薬だったので、戦略は明確になっていたと思います。再生医療でも、細胞そのものの特許が取れればそれでベストなのですが、難しい面も多々あって。そうすると実際の薬事とか医療とか、そういうところに精通していないと、その知財というのはうまく取得できないかなと思います。
畠 : なるほど。確かに再生医療全般に精通している必要があるかもしれませんね。
水落 : 低分子系の特許というのは 2つか3つでカバーできる場合が多いですけども、再生医療の場合、培養機器・器材であるとか、機械設備とか、それからもちろん、細胞の培養用培地、その細胞を選択するための技術、例えば顕微鏡観察や細胞の選択に AI 手段を取り入れるなど、幅広い技術が必要になってきているんだと思います。
ですので、そういう戦略をカバーできるように理解して進めるということも大事なことですし、そこが今までの創薬系の知財とは違った部分なのかなと思います。
畠 : 大学の先生方は、そのようなことはある程度ご存知なのでしょうか?
石埜 : そもそも普通の医薬の特許とかも知らない場合が多いですよね。
畠 : なるほど。ちなみに壬生先生と関わりのある先生方はいかがでしょうか?
壬生 : はい、意識されていると思います。
畠 : それは壬生先生のご指導が行き届いてるかもしれませんね。
内山 : 再生医療においても、一つ一つの特許に関しての考え方はそれほど変わらないかもしれないのですが、特に再生医療では、リサーチツール、製品、抗体や細胞など、すべてにおいて、自らの権利化、ライセンスインなどを含んだ総合的な知財戦略は非常に重要だと思います。
水落先生がおっしゃったように、再生医療等製品を製造するために様々な技術が関わってくるので、自社技術のみで完結するのはまず不可能だと思うんです。
ですので、例えば半導体などの分野にあるようなパテントプールと同じである必要はないと思いますが、コンソーシアムを構築して相互に非独占で知財化された技術を応用できるような仕組みがないと、うまく機能しないのかなと思います。
畠 : ひとつのモダリティを出すために関わっている特許が山のようにあったりすると、それをどう回避するかだけで大変な作業ですね。
小清水 : いわゆる交通整理こそ、企業主導で行っていくことも重要です。様々な技術を持ち込んでプール式にして、必要な技術はある程度自由に取得できるような形づくりが重要だと思います。
そして汎用的なモノや技術はライセンスアウトして、コアなモノや技術は必ず自分たちが保有しておく、というのはどうかな、と。
畠 : 実際にはそういう仕組みでも作らないと、回らないということですね。
〇研究者が知るべき競争領域-非競争領域戦略の基本的考え方
畠 : 先ほどのお話しにも入っていたかもしれませんが、やはり、競争領域と非競争領域、例えば、特許と標準みたいなものかと思いますけど、このあたりについて、河内さん、FIRM(再生医療イノベーションフォーラム)の標準化委員会の委員長やっておられて、何か思うところありますか。
河内 : そうですね、成熟した産業では、その範囲の中で競争するしかないですが、再生医療というのは AMED のレポートなどでも、これから先20年くらいの間に2桁市場が伸びる、と試算されているので、競争することだけを考えていてもあまり意味はないと感じています。
非競争領域、すなわちオープンにする範囲を明確に定めて、お互いが共通で使えるようなモノや技術を決めながら、産業自体が伸びるようにしなければならないと考えています。
その一方で、競争領域では技術の開示を極力抑えてクローズ化することがとても重要で、例えば標準の場合には、「こういうことを達成しなければいけない」という課題だけ示しておいた上で、技術は自分の中で温めておいて、良いタイミングで特許を出すという戦術も可能であると思っています。
再生医療で、これが標準細胞とか、標準のプロトコルとか、そういうことはなかなか決められないですよね。ただその手前の、例えば、製造を安定化させるための考え方ですとか、その品質保証の観点の中で、「どういう目的で使うものだからこういう特性が無ければいけなくて、それのための試験法はこうやって確立しなければいけない」といった共通する考え方が標準となって、各々が使用できるようになって、はじめて産業の発展に寄与するものだという認識です。
畠 : なるほど。よくわかりました。標準化は、まさにパテントプールに近い機能を発揮するのかもしれませんね。
さて、本日は再生医療と知財という観点でさまざまなお話を伺うことが出来ました。再生医療に関する知財戦略の深さに加え、一歩間違うと全く進まない恐れをきたす領域であることがよくわかりました。今後、わが国の再生医療の発展のためには、企業とアカデミアの両者がリスペクトをもって対応する必要があることを再認識しました。
今回の座談会は、引き続き企画しております知財セミナーへのいざないの意味を込めております。本日話題になったことや、先生方が日頃考えておられることを、次にはセミナーの形式で参加者の方々にお話しいただければと思います。当ナショナルコンソーシアムとしましても、再生医療の産業化に資する重要なテーマとして今後もこの再生医療の知財について扱ってまいりたいと思っております。引き続き、ご支援いただけましたら幸いです。
先生方、本日は本当にありがとうございました。また、セミナーでのご講演、何卒よろしくお願いいたします。
